
「英語を読むスピードが遅すぎて、TOEICの長文が最後まで終わらない」
「多読がいいって聞くけど、本当にスピードは上がるの?」
こんな悩みを持っている人は多いと思う。実際、僕も昔は英文を読むのがとにかく遅かった。1文ずつ日本語に訳しながら読んでいたから、200語の文章に5分以上かかっていた時期もある。
放っておくと、リーディングの遅さはリスニングにも波及する。読めないものは聞き取れないからだ。でも逆に言えば、読むスピードを上げれば英語力全体が底上げされる。
この記事では、多読で読むスピードがどれだけ変わるのかを研究データで検証する。「なんとなく良さそう」ではなく、数字で納得したい人に向けて書いた。
多読で読むスピードは約1.9倍になる【研究データ】
結論から言うと、多読は読むスピードを大幅に引き上げる。これは「なんとなくそう思う」ではなく、研究で実証されている事実だ。
台湾の大学で行われた研究(Beglar, Hunt & Kite, 2012)では、多読グループと集中読解グループの読解速度を比較した。結果は以下のとおり。
| グループ | 開始時 | 終了時 | 伸び幅 |
|---|---|---|---|
| 多読グループ | 68 wpm | 128 wpm | 約1.9倍 |
| 集中読解グループ | 78 wpm | 93 wpm | 約1.2倍 |
wpmとは「words per minute」の略で、1分間に読める語数のこと。日本人の英語リーディング速度は平均80〜100wpm程度と言われている。ネイティブは約300wpmだから、その差は歴然だ。
注目すべきは伸び幅の差である。多読グループは60wpmも向上したのに対し、集中読解グループは15wpmしか伸びていない。同じ時間をかけても、やり方次第で4倍の差がつくということになる。
(参考: Beglar, Hunt & Kite, 2012 - ERIC)
なぜ多読だとスピードが上がるのか
多読でスピードが上がる最大の理由は、英語を英語のまま処理する回路ができるからだ。
集中読解だと、一文一文を丁寧に分析する。文法構造を確認し、日本語に訳して理解する。正確さは上がるが、処理速度は上がりにくい。
一方、多読では大量の英文に触れることで、頻出の語彙や構文パターンが自動的に処理されるようになる。いちいち頭の中で翻訳しなくても意味が取れる状態、いわゆる「英語脳」に近づいていくわけだ。
これは自転車に乗るのと似ている。最初はペダルの漕ぎ方やバランスを意識するけど、慣れれば無意識にできるようになる。多読は、英語リーディングにおけるその「慣れ」を作る作業と言える。
タイムドリーディング併用でさらに25%向上する
多読の効果をさらに高めるテクニックがある。タイムドリーディングだ。
タイムドリーディングとは、制限時間を設けて読むトレーニングのこと。ストップウォッチで計測しながら読み、wpmを記録していく方法である。
先ほどの研究では、多読にタイムドリーディングを組み合わせたグループがさらに+29wpm(約25%)の向上を見せた。つまり、ただ読むだけよりも「時間を意識して読む」ほうが効果が高いということだ。
タイムドリーディングの具体的なやり方
やり方はシンプルで、以下の3ステップになる。
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自分のレベルに合った英文を用意する
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ストップウォッチで時間を計りながら読む
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読んだ語数 ÷ かかった時間(分)でwpmを算出する
ポイントは、わからない単語があっても止まらないこと。推測して読み進めるクセをつけることが大切だ。最初は50〜60wpmでも気にしなくていい。継続すれば数字は確実に伸びていく。
1回あたり5〜10分で十分なので、毎日の習慣にしやすいのもメリットである。
読むスピードが上がると読解力も一緒に伸びる
「スピードを上げたら、理解が雑になるんじゃないか」
この不安は多くの人が持っているけれど、研究データはむしろ逆の結果を示している。多読による読解速度の向上は、読解力(comprehension)の向上にも直結するのだ。
Suk(2017)のメタ分析によれば、多読介入後に読解力が有意に向上したことが確認されている。速く読めるようになった人は、同時に正確に読む力も伸びていたということだ。
さらに興味深いのは、EFL環境(日本のような外国語として英語を学ぶ環境)のほうが、ESL環境(英語圏に住んで英語を学ぶ環境)よりも多読の効果が大きいという点。日常で英語に触れる機会が少ない環境だからこそ、多読による大量インプットが効くのだろう。
(参考: Suk, 2017 - Springer)
スピードと理解が両立する理由
スピードと理解力が同時に向上するのは矛盾しているように思えるかもしれない。しかし、実はこれには合理的な説明がある。
読むのが遅い状態では、短期記憶(ワーキングメモリ)に負荷がかかりすぎる。一文を読み終わる頃には、文の前半の内容を忘れてしまっている。だから全体の意味がつかめないのだ。
読むスピードが上がると、文章全体をまとまりとして処理できるようになる。個々の単語ではなく、文脈として理解できるから、結果的に読解の精度も上がる。遅く読むほど理解が深まるというのは、実は思い込みなのである。
多読で読むスピードを上げる5つの実践ルール
研究データで効果がわかったところで、実際にどう多読に取り組めばいいのか。ここでは、効果を最大化するための5つのルールを紹介する。
ルール1: 自分のレベルより少しやさしい素材を選ぶ
多読で最も重要なのは素材選びだ。目安は「知らない単語が1ページに2〜3語以下」の素材。98%以上理解できるレベルが理想と言われている。
難しすぎる素材を選ぶと、辞書を引く回数が増えて多読にならない。やさしすぎるくらいでちょうどいいと考えよう。英語多読の完全ガイドでも素材選びのポイントを詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
ルール2: 辞書を引かずに読み進める
わからない単語に出会っても、辞書を引かずに読み続ける。これが多読の鉄則だ。
文脈から推測する力は、実は非常に重要なリーディングスキルである。ネイティブだって、すべての単語を知っているわけではない。前後の文脈から意味を推測しながら読んでいるのだ。
ルール3: つまらなかったらやめる
多読の第一人者であるDay & Bamford(1998)は「つまらなければ別の本に移ること」を推奨している。楽しくなければ継続できないし、継続できなければ効果は出ない。
多読は筋トレではなく、散歩のようなものだと思ってほしい。気楽に、でも毎日続けることが大切だ。
ルール4: 毎日15〜30分を確保する
研究データで効果が出ているケースの多くは、半年〜1年の継続が前提になっている。1日15〜30分でいいから、毎日読む習慣をつけることが重要だ。
通勤時間や寝る前の時間を使えば、特別な時間を作らなくても継続できる。スマホで読めるツールを使うのも手だろう。
ルール5: wpmを定期的に計測する
数字で成果が見えると、モチベーションが維持しやすくなる。月に1回でいいので、同じレベルの素材でwpmを計測してみよう。
前述のタイムドリーディングと組み合わせれば、計測と練習を同時にこなせる。右肩上がりのグラフが見えてくると、続ける楽しさが生まれてくるはずだ。
「多読は効果がない」と感じる人がやりがちなミス
多読に取り組んでいるのにスピードが上がらないという声もある。実は、そういう人には共通するパターンがある。
ミス1: 素材が難しすぎる
最も多いのがこれだ。「せっかく読むなら難しいものを」と考えてしまう人が多いが、これでは精読になってしまい、多読の効果が出ない。
多読と精読は目的が異なる。精読は文法や構文の理解を深めるため、多読はスピードと流暢さを伸ばすためのトレーニングだ。目的に合った素材レベルを選ぶことが大前提になる。
ミス2: 読む量が少なすぎる
週に1回30分だけ読んで「効果がない」と判断するのは早い。多読の効果が出始めるのは、ある程度の量を読んだ後だ。
目安として、年間10万語以上の読書量が推奨されている。1日300語の英文を読むだけでも、年間で約10万語になる計算だ。1日5〜10分の量で十分に達成できる数字である。
「英語多読は効果なし?」と感じている人は、量と素材レベルの見直しから始めてみてほしい。
ミス3: 返り読みのクセが抜けない
一度読んだ箇所を何度も戻って読み直す「返り読み」は、リーディング速度を大幅に落とす原因になる。
多読では、わからない部分があっても前に進む。最初は気持ち悪いかもしれないが、全体の文脈で補完する力がついてくれば、自然と返り読みは減っていく。
AIツールを活用して多読の効率を上げる
多読を続ける上でハードルになるのが、「自分に合った素材を見つけるのが面倒」という問題だ。レベルが合わない素材を選んでしまうと効果が半減するし、毎回探す手間も馬鹿にならない。
最近はAIを活用した多読ツールが登場しており、素材選びの問題を解決しやすくなっている。たとえばTa-dokuでは、AIが英文の構文解析を行い、わからない部分をその場で確認しながら読み進められる。辞書を引く手間がなくなるから、多読の「止まらずに読む」という原則を守りやすい。
もちろん、ツールに頼りすぎるのはよくない。最終的には何の補助もなしに読めるようになることがゴールだ。ただ、多読を始めたばかりの段階では、挫折を防ぐためにテクノロジーを味方につけるのは賢い選択だと僕は思っている。
まとめ: 多読で読むスピードを上げるために
この記事の要点を振り返ろう。
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多読で読むスピードは約1.9倍に向上する(68→128wpm、研究データより)
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タイムドリーディングを併用すると、さらに25%の上乗せ効果がある
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スピードが上がると読解力も一緒に伸びる(速く読む=雑に読むではない)
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日本のようなEFL環境では、多読の効果がとくに大きい
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素材選び(98%理解できるレベル)と継続(毎日15〜30分)が成功の鍵
今日からできるアクションは1つ。まずは自分の現在のwpmを計測してみることだ。スタート地点がわかれば、伸びを実感しやすくなる。そこから、自分のレベルに合った英文を1日15分読む習慣を始めてみよう。
Aki
Ta-doku 開発者 / 英語多読実践者
英語多読歴3年。自身の多読経験から生まれた課題を解決するため、YouTube×AI多読サービス「Ta-doku」を開発・運営しています。
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