
「韓国人はなぜあんなに英語を話せるんだろう?」
韓国人が英語を話せる理由を知りたい人は多い。TOEIC平均点は韓国675点に対し日本561点。114点もの差がある。EF EPIでは韓国48位、日本は96位。同じアジア圏なのに、ここまで英語力に差がついたのはなぜか。
結論から言うと、韓国は1997年の通貨危機をきっかけに国を挙げて英語教育を改革した。「生き残りのために英語が必要」という社会全体の危機感が、教育の中身と国民の学習姿勢を根本から変えた。この記事では、韓国人が英語を話せる5つの理由をデータと共に解説する。
韓国と日本の英語力差はどれくらいか?データで比較
韓国と日本の英語力差は、感覚ではなく数字で明確に表れている。主要な3つの指標を見てみよう。
TOEIC・TOEFLの平均スコア比較
| テスト | 韓国 | 日本 | 差 |
|---|---|---|---|
| TOEIC L&R | 675点 | 561点 | 114点 |
| TOEFL iBT | 86点 | 73点 | 13点 |
TOEIC 114点差は、ビジネスで「相手の話がだいたい分かる」レベルと「部分的にしか聞き取れない」レベルの違いに相当する。TOEFL 13点差も、海外大学の出願基準で言えば合否を分けるラインだ。
EF EPI(英語能力指数)の順位差
| 指標 | 韓国 | 日本 |
|---|---|---|
| EF EPI 順位 | 48位 | 96位 |
| レベル | Moderate(500台前半) | Very Low(446) |
EF EPIは世界113カ国以上の英語能力を測定する指標だ。韓国は「中程度」、日本は5段階の最低ランク。順位差は48もある。韓国が特別高いわけではないが、日本が低すぎる現実がここに表れている。
韓国人が英語を話せる理由1:通貨危機が生んだ「英語は生存スキル」という危機感
韓国人が英語を話せる最大の理由は、国全体が「英語ができないと生き残れない」と痛感した経験にある。
1997年、アジア通貨危機が韓国経済を直撃した。韓国ウォンは暴落し、多くの企業が経営危機に陥った。IMFに支援を求める事態にまで追い込まれた韓国は、生き残りのためにグローバル化を加速させる。
企業は海外市場に打って出るしかなかった。当然、社員に英語力が求められる。サムスンをはじめとする大企業はTOEIC 850点以上を採用条件に設定し、英語力は「あると有利なスキル」から「ないと生きていけないスキル」に変わった。
韓国の貿易依存度は80%を超える。日本の約30%とは比較にならない。国の経済が海外との取引に依存している以上、英語は教養ではなく経済インフラなのだ。
韓国人が英語を話せる理由2:日本より20年早い教育改革
韓国は日本より20年以上早く、小学校での英語教育を本格化させた。この「20年の差」が、今の英語力差に直結している。
小学校英語の導入タイムライン
| 年 | 韓国 | 日本 |
|---|---|---|
| 1997年 | 小学3年で英語を必修化 | 変化なし |
| 2008年 | 小学1年からに前倒し | 変化なし |
| 2011年 | (既に14年の蓄積) | 小5・6で外国語活動を必修化 |
| 2020年 | (既に23年の蓄積) | 小3・4で外国語活動、小5・6で教科化 |
韓国が小学校英語を始めた1997年、日本の小学生はまだ英語に触れてすらいなかった。しかも韓国の小学生は日本より累計130時間以上多く英語を学んでいる。この差は中学・高校と積み重なり、大学入学時点では圧倒的な開きになる。
日本が「後追い」しても追いつけない構造
日本も2020年に小学校英語を教科化した。しかし韓国はその23年前に着手している。制度が変わっても、教師の指導力や教育のノウハウは一朝一夕には育たない。韓国は20年以上かけて積み上げた実績がある。日本が追いつくには、同じだけの時間と本気の改革が必要だ。
韓国人が英語を話せる理由3:「話す英語」を教える授業スタイル
韓国の英語授業は「英語で話す」ことを目標にしている。日本との授業スタイルの違いは、想像以上に大きい。
コミュニカティブ・アプローチ(CLT)とは
韓国の英語教育はCLT(Communicative Language Teaching)を採用している。CLTとは、文法の暗記ではなく「英語で意思疎通できること」をゴールにした教授法だ。
具体的には、以下のような活動が授業の中心になる。
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英語でのプレゼンテーション
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ディベート(賛否を英語で議論)
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ペアワークでのスピーキング練習
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ロールプレイ(実際の場面を想定した会話)
教師も英語で授業を進める。生徒は間違いを恐れず発言することを求められる。
日本の文法訳読式との違い
| 項目 | 韓国(CLT) | 日本(文法訳読式) |
|---|---|---|
| 授業の言語 | 英語中心 | 日本語中心 |
| 授業の目標 | 実践的コミュニケーション | 文法理解・和訳 |
| 主な活動 | プレゼン・ディベート・会話 | 和訳・穴埋め・暗記 |
| 教師の役割 | ファシリテーター | 講義者 |
| 生徒の発話量 | 多い | 少ない |
日本の授業は「英語について日本語で学ぶ」時間。韓国の授業は「英語を使って英語で学ぶ」時間。同じ「英語の授業」でも、中身がまったく違う。話す練習をしなければ、話せるようにならないのは当然だろう。
教師の質を制度で担保している
韓国では英語教師に対する研修制度と認定試験が整備されている。英語で授業を進める能力が制度的に求められるのだ。日本では教師自身が英語で授業を行うことに不安を感じているケースも多く、教師の英語力向上が長年の課題になっている。
韓国人が英語を話せる理由4:社会全体が英語を「使う」環境
韓国人の英語力は、教室の中だけで育ったわけではない。社会全体が英語に触れる環境を作っている。
就職に直結する英語力
韓国の大企業では、新卒採用にTOEIC 850点以上を求めるケースが珍しくない。サムスン、LG、ヒュンダイといった財閥系企業はグローバル市場で戦っており、英語力は採用の必須条件だ。
大学の卒業要件にもTOEICスコアが課されている場合がある。日本のように「英語ができなくても国内で就職できる」という選択肢が少ない。英語力がなければキャリアの入り口に立てない社会構造が、学習の強力な動機になっている。
留学志向の高さ
韓国では海外の大学で取得した学位が、国内の大学よりも高く評価される傾向にある。そのため留学を目指す学生が多く、英語を「将来使うツール」として実感を持って学んでいる。
日本では国内の大学ブランドが就職に強い。海外大学の学位が国内大学より有利になるケースは限定的だ。英語を学ぶ動機の強さが、そもそも違う。
「ミスを恐れない」発言文化
韓国人は授業中でも積極的に発言する傾向がある。間違った英語でもまず口に出す。完璧な文を頭の中で組み立ててから話す日本人とは対照的だ。
言語学者クラッシェン(Stephen Krashen)の「情意フィルター仮説」によれば、不安や恥ずかしさが強いほど言語習得は妨げられる。韓国の「まず話す」文化は、英語習得にとって理想的な環境と言える。
韓国人が英語を話せる理由5:圧倒的なインプット量の差
韓国人の英語力を支えているのは、教室の外での英語接触量の多さだ。言語習得理論の観点から見ても、韓国のアプローチは理にかなっている。
クラッシェンのインプット仮説と韓国
言語学者クラッシェンの「インプット仮説」は、言語習得にはi+1(現在のレベルより少し上)の理解可能なインプットが大量に必要だと主張する。韓国の英語環境は、まさにこの条件を満たしている。
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学校の授業が英語で進む(CLT)=授業自体がインプット
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私教育(塾・家庭教師)で追加の英語学習
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英語のメディア(映画・ドラマ・音楽)に日常的に触れる
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就職・昇進のためにTOEIC対策を継続する
韓国では、学校+塾+メディアの3チャンネルから英語のインプットが流れ込む。日本では英語に触れる時間が学校の授業にほぼ限られるため、インプット量に圧倒的な差がつく。
小学校だけで130時間の差
韓国の小学生は日本より約130時間多く英語の授業を受けている。130時間は、毎日1時間勉強しても約4か月分に相当する量だ。小学校だけでこれだけの差がある。中学・高校を含めれば、卒業までに数百時間の差が開く計算になる。
英語力は「どれだけ英語に触れたか」の累積で決まる。才能やセンスの問題ではなく、時間の問題だ。韓国はその「時間」を教育制度と社会構造の両面で確保している。
韓国の事例から日本人が学べること
韓国と同じ制度を日本に導入するのは現実的ではない。しかし、個人レベルで取り入れられるポイントはある。
「使うための英語」にシフトする
韓国の教育改革の本質は、「テストのための英語」から「使うための英語」への転換だ。個人の学習でも同じことが言える。文法書を読むだけでなく、英語を実際に読む・聞く・話す時間を増やすことが重要だ。
インプット量を意識的に増やす
韓国人と日本人の英語力差は、結局のところインプット量の差に行き着く。クラッシェンの理論が示す通り、大量の理解可能なインプットが言語習得の鍵だ。
英語の多読はインプット量を増やす最も効果的な方法の一つ。自分のレベルに合った英語の本を大量に読むことで、英語を英語のまま処理する力が自然に身につく。韓国の「授業+塾+メディア」に匹敵するインプット環境を、多読で個人的に構築できる。具体的な始め方は「英語多読の完全ガイド」で詳しく解説している。
「完璧」を手放す
韓国人の「まず話す」姿勢は、英語学習で最も大切なマインドセットかもしれない。文法が多少間違っていても通じる。完璧な英語を目指すほど、話せなくなる。
多読の世界にも「分からない単語は飛ばす」という原則がある。完璧に理解しようとせず、大量に触れることで力がつく。英語学習においても、完璧主義を手放した人のほうが結果的に伸びる。
まとめ:韓国人が英語を話せる理由は「仕組み」と「動機」
韓国人が英語を話せる理由は、才能でも遺伝でもない。国を挙げた教育改革と、社会全体の「英語が必要」という動機の組み合わせだ。
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1997年の通貨危機で「英語=生存スキル」という危機感が国全体に広がった
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日本より20年早く小学校英語を必修化し、累計130時間以上多く学んでいる
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授業はCLT(コミュニカティブ・アプローチ)で「話す英語」を重視している
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就職・留学・昇進で英語が必須となる社会構造が学習動機を維持している
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学校+塾+メディアの3チャンネルで圧倒的なインプット量を確保している
日本人が韓国と同じ環境を作るのは難しい。しかし、インプット量を増やすことは個人の工夫で実現できる。まずは自分のレベルに合った英語の本を1冊、手に取ってみてほしい。多読は、韓国が国を挙げて確保した「英語に触れる時間」を、個人で手に入れる最も現実的な方法だ。
Aki
Ta-doku 開発者 / 英語多読実践者
英語多読歴3年。自身の多読経験から生まれた課題を解決するため、YouTube×AI多読サービス「Ta-doku」を開発・運営しています。
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